生産者の想いを伝える BBQマーケティング|株式会社ファーマーズバーベキュー

「生産者と生活者をつなぐこと」をテーマに、バーベキューという場を通して食材本来の美味しさや生産者の想いを伝えている株式会社ファーマーズバーベキュー。同社の展開する「FARMERS BBQ」は、全国のこだわりを持った生産者の顔が見えるバーベキューとして、人気を集めています。なぜバーベキューで事業を行うことになったのか、農業に対する想いやどんなことを意識して働いているのかを、代表の宮治さんにインターンシップガイド編集部がお話を伺いました。

みやじ豚のブランディング成功が、「FARMERS BBQ」のきっかけに

―バーベキューをすることになったきっかけは、なんだったのでしょうか?
私の実家では、もともとみやじ豚の農家を営んでいたのですが、父の代から引き継いで、みやじ豚のブランド化に取り組みました。最初は、直販する仕組みをつくって、飲食店や百貨店の肉屋さんでの販売や、個人向けにオンラインショップで販売をしていました。さらにどのようにして、多くの人にみやじ豚を知っていただくかを考えたときに、バーベキューが浮かんだのがきっかけでした。新規顧客を開拓していく方法としてバーベキューをイベントとして取り入れたところ徐々にお客様に認知していただけるようになりました。結果的に、みやじ豚は農林水産大臣賞を受賞することができ、ブランド化に成功したんです。私は「バーベキューマーケティング」と名付けて、よくこの言葉を使っています。

―ファーマーズバーベキューで事業展開することにしたのはなぜでしょうか?
バーベキューで事業展開をする以前の2008年には、農業支援を行う「NPO法人農家のこせがれネットワーク」というのを立ち上げました。ここでは農家に生まれ都心で働く人を「こせがれ」と呼んで、「こせがれ」たちに農家の魅力や、可能性といったものを伝える数々の活動をしています。そこには、少しでも農業に振り向いてもらいたいという想いがあるんです。きっかけを提供できる場づくりを通して、実家に帰り農家をする人も増えていきました。しかし、ふと気づいたんです。「こせがれ」に対する、実家に帰るきっかけづくりはできていたけれど、帰ったあとの彼らが直面する業界の問題点に対して、私たちが関わっていけていないと。「帰らせて、帰らせっぱなしでいいのだろうか」、そんな思いになりました。現実的な問題として、実家の農業を継いだものの事業がなかなか軌道に乗せられず悩む農家さんもいたんです。そんな現状から、「農家の『こせがれ』たちに、武器となるものを提供したい」という想いが強くなりました。私がバーベキューイベントを通じて、みやじ豚のブランド化に成功したように、こせがれや就農まもない農家たちに、バーベキューをマーケティングツールとして提供することは、非常に可能性があるのではないかと考え、事業化することにしたんです。

―農業を営む人が直面する業界の問題点は、どこにあると思いますか?
問題点は大きく2つあると思っていたんですが、ひとつは「生産者に価格決定権がない」ということです。基本的には市場出荷で全量買い取ってもらえるものの、相場価格が決まっているということがあります。生産者が手間暇をかけ、ていねいに作ったいい農作物であっても価格に反映する決定権がないんです。そして、もう一つは「生産者の名前が出ずに流通していく」ということです。複数の生産者が作っていても、地域のくくりで「〇〇地域の〇〇豚」という形でお客様に届けられていました。生産者の名前が出ずに流通することで、生産者は直接お客様からフィードバックを受け取れません。フィードバックは仕事に対する大切な評価だと思いますし、それが仕事のやりがいにもつながっていくと思うんです。それが届かないというのは残念なことだと感じました。
バーベキューを始めたきっかけは、みやじ豚をどのようにしてブランド化させるかということでしたが、私が当時感じた業界の問題点も、バーベキューという場を作ることで解決できるのではと思うようになっていったんです。

―ファーマーズバーベキューは、生産者にとってどんな役割があるとお考えですか?
私は農家の問題点のひとつに「事業承継」があると思っています。事業主も後継者も、現事業主が元気なうちに継いでいく、という意識が低いと感じています。事業承継は先代がやってきた仕事をそのまま受け継ぐことではなく、後継者が事業のどこに価値を感じてこの先の事業を営んでいくかが大切だと思うんです。後継者が価値を磨いていき、新しい事業をつくるとか、自分なりの表現をしていくことが、事業承継なのではないかと。事業承継とファーマーズバーベキューは直接的につながることではないのですが、後継者が事業の価値を見出し、ひとつの武器になるものとして、私たちはバーベキューという場を提供できると思っています。

―生産者だけではなく、お客様にとっても美味しい食材と出会えるきっかけになりますね。
そうですね。生産者と直接触れ合う機会がありますし、食材一つ一つを堪能できる体験ができると思いますね。パプリカの食べ方を例にすると、まずまるごと焼いていくと中につゆがたまっていきます。それを上からかじりながら食べて、最後はつゆを飲む。直接生産者やスタッフから、まるごとパプリカを楽しむ食べ方を知ることができるんです。これまで経験したことがない食べ方ができるのは、バーベキューという場ならではだと思うんですよね。それで、実際に食べたら「あ、美味しい」ってなるわけで。非日常の経験だったりするので、お客様にも素敵な時間を提供できると思っています。

―将来の展望がありましたら、教えてください。
将来的には、47都道府県でファーマーズバーベキューが開催されるようにしていきたいですね。それによって、地域の観光資源にもなるよう、ファーマーズバーベキューを育てていきたいと思っています。生産者側のスタンスで場をプロデュースしていき、地域の観光資源になるよう育てていきたいと思っています。我々は、飲食店でもなく、バーベキュー屋さんでもないので、バーベキューという武器を使って、どのように地域を活性化していくかという部分に生産者をプロデュースする目線を持って取り組んでいきたいと思っています。

インターン生を募集!

―東急百貨店でファーマーズバーベキューの開催が決まったそうですね。
そうですね。4月から東急百貨店吉祥寺店の屋上で、ファーマーズバーベキューを開催することが決定しました。生産者に限った話ではありませんが、食材を卸す仕事に関わる人にとって、百貨店と一緒に仕事をさせていただくことは、ひとつの目標やステータスになると思っています。例えば、新規就農で農業を始めた場合生産にかかりきりになって、東京に営業に行く時間を確保するのは困難になります。そんなときに、ファーマーズバーベキューを利用してもらいたいと思っています。百貨店でお客様に提供できるというのは、生産者にとって認められた証のひとつになると思うので、私たちが百貨店でやらせていただくことに意義があるんです。私たちにとっても、ファーマーズバーベキューに食材を提供すればブランディングができると生産者に言っていただけるよう、成長していきたいと思います。

―今回インターン生も募集することになったんですよね。
インターン生の活動期間としては1年間と考えています。東急百貨店のバーベキューは、4月〜6月までは土日、7月以降は全日での営業を予定しています。インターン生には店長補佐として、オペレーションをしていただく予定です。もちろん週5日勤務とは言いませんが、学生さんの希望を伺いながら、可能な限り関わっていただける方をお待ちしています。ほかにも、地方生産者とコラボレーションをしたイベント企画運営、ウェブマーケティングなども経験していただくこともできます。やる気があって取り組んでいただければ、さまざま経験ができると思いますし、当社としてもインターン生に惜しみなくノウハウをお伝えしたいと思っています。

―どんな学生にエントリーしてもらいたいでしょうか?
やはり、地方生産者と関わったり、食材をお客様にご提供をする場づくりをしていくことになるので、農業の支援やビジネス、「食べること」に関心がある学生に応募していただけたらと思っています。あとは、ビジネスのリアルを学ぶことができるインターンなので、イノベーション、ブランディングやマーケティングなどに興味のある学生のエントリーもお待ちしています。

どんなことも自分事に捉えて行動を

―宮治さんはどんなマインドを持って、仕事をされていますか?
私は、バーベキューという場づくりの仕事をしていますが、趣味を聞かれてもバーベキューと答えています。例えば、農家であれば「家」と漢字がつくぐらいなので、働くことと生きることに境界線がないと思っています。ワークライフバランスという言葉がありますが、私にとってもワークとライフが一致しているのが理想のライフスタイルだと思っているので、バランスをとる必要がないんです。そんな中、大切にしているのは「いかに自分の仕事を自分事に捉えられるか」ということですね。きっとこれは、インターン生でも社会人であっても同じことだと思いますね。やらされている状態はつまらないけど、自分のプロジェクトなんだと思えると楽しめるはずです。

―「働く」ことを意識する大学生に、メッセージをお願いします。
働くということでいうと、自分にぴったりの仕事は探しているだけだと、なかなか見つからないんですよね。目の前にある仕事を一生懸命やって、そこに訪れる目の前のチャンスを逃さず行動していくうちに、また次が見えてくると思います。次々と経験していくうちに、気づいたら「今の仕事が天職かもしれない」と感じるようになるんじゃないかなと。自分事に捉えて、目の前の仕事をまずはやってみることをお勧めしたいですね。そうすると仕事の面白さもわかったり、自分が本当にやりたいことが見えてくると思います。

ファーマーズバーベキュー 代表者プロフィール

株式会社ファーマーズバーベキュー 代表取締役社長 宮治 勇輔
株式会社みやじ豚 代表取締役社長
NPO法人農家のこせがれネットワーク 代表理事

1978年、湘南地域の小さな養豚農家の長男としてこの世に生を受ける。
2001年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、株式会社パソナに入社。営業・企画・新規プロジェクトの立ち上げ、大阪勤務などを経て2005年6月に退職。
実家の養豚業を継ぎ、2006年9月に株式会社みやじ豚を設立し、代表取締役に就任。生産は弟、自身はプロデュースを担当し、独自のバーベキューマーケティングにより2年で神奈川県のトップブランドに押し上げる。みやじ豚は2008年農林水産大臣賞受賞。
みやじ豚は順調に推移するも規模拡大をよしとせず、日本の農業の現状に強い危機意識を持ち、都心で働く農家のこせがれの帰農支援を目的に、2009年にNPO法人農家のこせがれネットワークを設立。2010年、地域づくり総務大臣表彰個人表彰を受賞。2015年より農業の事業承継を研究する、農家のファミリービジネス研究会を主宰。
2017年8月、生産者に最も近いBBQを企画運営する株式会社ファーマーズバーベキューを設立。DIAMOND・ハーバード・ビジネス・レビュー「未来を創るU-40経営者20名」。著書に『湘南の風に吹かれて豚を売る』

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インターンシップガイド編集部
インターンシップガイド編集部では、さまざまな企業や大学生のインタビューや、業界や会社研究、大学生活の過ごし方といった内容を中心に学生目線で学生に価値ある情報を発信していきます。
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