近年のデジタル技術の発展は目覚ましく、今私たちはどこでも簡単に画像を撮影して、編集、共有ができるようになりました。画像・映像にかかる技術は日々進化していく中、スマートフォン、放送、車載、ファクトリーオートメーション、医療分野などに、最先端の画像処理技術とAI(人工知能)を駆使した画像認識技術をソフトウェアで提供しているのが、株式会社モルフォです。業界の変化に対応しながら、次々とテクノロジーを具現化する同社のビジネスや将来像、これから必要とされる人材についてなど、代表の平賀さんにお話を伺いました。
さまざまな分野で活用される、モルフォの画像・映像認識技術
―まず、事業内容について教えてください。
当社は画像・映像処理、それから画像や映像認識の技術開発をしておりまして、それをソフトウェアとしてお客様に使っていただいています。受託開発も一部ありますが、メインは自分たちで作ったソフトウェアをお客様にライセンスして、使用料をいただくというビジネスモデルですね。
カメラデバイス事業では、当社の売上として最も大きいスマートフォンを中心に、車載、監視カメラの一部に当社の技術を採用していただいています。いわゆる、組込み向けの製品。具体的な技術でいうと、例えば手振れ補正であるとか、HDR(「ハイダイナミックレンジ」の略)、パノラマ撮影などのソフトウェアを提供させていただいています。
またネットワークサービス事業においては、画像処理技術のほかに、「ディープラーニング」など画像認識技術を使ったシステムの開発やライセンス、サポートといったことも行っています。今後さらに、さまざまな業界に事業を拡大していきたいと思っています。
ーBtoBのビジネスということですね。具体的に企業との取り組みをお聞かせください。
例えば、車載カメラで言えば株式会社デンソーという車部品メーカーがありますが、将来の自動運転技術ですとか、運転支援のために車載カメラ向けの画像認識機能、技術の開発を一緒にさせていただいたり。あとは、医療系では株式会社エスアールエルという受託臨床検査事業を行う会社と一緒に血液検査の自動化に向けての開発をしています。
ほかにも、当社の技術は画像映像のあるいろいろなところで使われており、某放送局のニュース番組に流れる監視カメラの映像で見にくいものを鮮明化したりといったことも行っています。
―業界の流れやトレンドについても、ぜひ教えてください。
ステレオカメラですとか、AI関連はまさにトレンドだと思います。画像、映像認識ですね。当社も力を入れている「ディープラーニング」という技術も、まさにそうです。
ディープラーニングというのは、日本語にすると“深層学習”ですが、いわゆるAI技術のひとつで、人間の脳の仕組みを真似して、コンピューターにそれと同じことをさせる技術。人間の脳って神経細胞というものがたくさんあって、そこに電気信号が流れることで思考をしているんですけれども、それと同じことをコンピュータが行うんです。このような技術が、注目されています。
AIに代替されない人材になるために
―AI時代の到来で、人間の雇用を代替すると言われています。今後はどのような人材が求められるとお考えですか。
AIの発展やロボットが発達してくると、単純作業やルーティン作業は人の力を使う必要がなくなると言われています。電車の運転とか、ホテルのフロントだったり、車の自動運転となれば、タクシー運転手もいらなくなるでしょう。今コンビニのレジも、自動化に向けて動いていますよね。ただ、そんな時代に変わっていく中で、ホスピタリティを求められる接客や企画、クリエイティブなことは人間がやらないといけないので、そういった職業は残っていくと思います。決してAIにはできないことだと思うんです。
必要なのは、世の中の変化に対応していける人材だと思います。まず世の変化に合わせ、どんな技術が必要なのか、何をするためにソフトウェアを作らなければならないかといった、「課題設定ができること」が非常に大切。そして課題設定をして、どのように実現していくか「問題解決能力」も必要であると考えています。
―そのような人材になるためにも、学生のうちからできることはありますか。
とにかく、いろいろな経験を積むことではないでしょうか。今、当社の最高顧問にもなっている國井先生という方は、東大の名誉教授であり、私の大学時代の研究室の恩師でもあるんですが、新しいことに果敢に挑戦する方。その國井先生がいつもおっしゃっていたのは、「今日の常識が明日の常識だと思うな」という言葉です。世の中は常に変化していますし、今勉強していることが未来永劫役に立つかというと、必ずしもそうではない。そんな想いを持っていた先生だからこそ、大学当時の私は日本だけにとどまらず、海外での学会に参加させてもらったり、自ら発表する機会があったりと、さまざまな経験をさせてもらいました。
國井先生からの教えがあり、私自身もいろいろなことを吸収してきたことで、刺激を受けながら、変化に対応していく力をつけられたと思っています。
―平賀さんは大学院卒業後、一度企業に就職されたんですよね。
はい。元々コンピュータが好きで、自分でソフトウェアが作るのが好きだったんです。中でも、コンピュータグラフィックスとか画像認識といったところに興味があって。大学・大学院時代はその研究をして博士課程まで出ましたし、アルバイトでも、制作ツールをつくるような活動をしていました。「自分でつくりたい」という想いが強かったので、大学院卒業後はエンジニアとして働いていました。
―そこから、なぜ創業する道を選んだのでしょうか。
私がやりたいと思っていたのは、自分が考えた画像に関するソフトウェアを使ってもらい、それでお金をいただける仕事ができたら、ということだったんです。それが、就職した会社ではなかなかやりたいと思うことができないと感じて。
そして、ソフトウェアのエンジニアとして、当時は少なくとも日本に自分が働きたいと思う会社がなかったんです。日本のソフトウェア会社では、例えば銀行のシステム開発を受注し、それを下請けに発注して、さらに孫請けに発注という下請けの構造があった。一方でマイクロソフトは、自分たちのOSを作り、一般消費者向けにビジネスをしていました。お客様からの指示で作るというより、世の中に必要だと思ったものを、自ら作っている。それができている会社は、当時の日本には思い当たらなかったわけです。世界的に見たとしても、そんなになかった。それならば、自分で会社をつくろうと決意したんです。
―フリーランスとして、仕事をするという選択もあったと思いますが。
確かに、そうですね。学生時代から映像関連の制作などをしていたので、知り合いもいましたし、仕事上のネットワークもあったので、フリーで仕事をすることも考えたりもしました。しかし、起業しようか考えたタイミングでたまたま「一緒に手伝う」と言ってくれる人がいたということもあり、会社にしようと思ったんです。
目指すは、世界中が「モルフォ」を認知すること
―会社の良さとは、どんなところにあるでしょうか。
やはり、社内でチームになってできるところはいい点だと思いますね。一人だとできることは限定的ですし、自分自身が何かあったときの責任も一人で負うことになります。チームがあることで、一人だけではできないことを成し遂げられます。また、業界がどうなっているか、どういうニーズがあるのかといった情報が集まってくるという点もあります。当社でも、スマホメーカーや車載メーカーはこういったことに悩んでいるとか、さまざまな業界からの情報が集まる面白さはあると思いますね。
―インターン生の募集も行っていますが、どのような学生を求めていますか。
テクノロジーが好きで、ソフトウェアを作っていて楽しいと感じられる方に来ていただきたいです。その上で、実際に使われている先端技術に触れてみたい、関わりたいという想いを持つ学生に来ていただければ、非常に刺激になりますし、楽しいと思います。
―最後に、今後モルフォをどんな会社にしていきたいか、お聞かせください。
世界中の人が「モルフォの技術はすごい」と言ってくれる会社にしたいと思います。
今、日本発のソフトウェアで、世界の人が知っているものってゲームやマンガコンテンツ以外、特にテクノロジーの分野においてはほぼありません。
海外の会社では、例えばドルビーと聞くと音響の会社だとイメージできるように、モルフォも、社名を聞くだけで映像が綺麗な会社だとイメージしてもらえるようになるのが、大きな目標。テクノロジーでとがっている会社だと認知されたいですね。
モルフォ 代表者プロフィール
平賀 督基
代表取締役社長
1997年東京大学 理学部情報科学科を卒業後、同大大学院へと進学。理学系研究科情報科学専攻(博士課程)修了し、博士(理学)号を取得する。大学在学時より画像処理や映像制作用の技術開発に携わり、研究で培った専門知識や経験を実世界に役立てたいという思いのもと、画像処理技術を専門に研究してきた東京大学出身の技術者を中心に、2004年株式会社モルフォを設立。以来、画像処理技術と「ディープラーニング」を駆使した画像認識技術との融合によるソフトウェアで、イメージングテクノロジーのトップブランドを目指し、同社の事業と技術開発を主導している。
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