音楽好きが集まる会社・株式会社クレオフーガ。クリエイターが音楽制作に専念できる仕組み作りとして、音楽コンテストをインターネット上で開催するサービス「クレオフーガ」、自分の制作した曲を販売できるサービス「オーディオストック」を運営しています。YouTubeやニコニコ動画などを活用しネット上で活躍するクリエイターが増えてきている中、同社の持つ役割や音楽制作の最先端を体感できるインターンシップの内容について伺いました。
「音楽クリエイターの未来を創る」
―西尾さんは、クレオフーガやオーディオストックというサービスによって、どんな世の中を創り出そうとしていますか?
音楽を作る人がハッピーになれることを目指しています。収益的にも満たされていて、クリエイティブに専念できることが理想ですね。クレオフーガは作品を発表する場づくり、オーディオストックはマネタイズの支援という位置付けで、展開しています。オーディオストックの会員クリエイターの中には、月に数十万円の収入を得る人も出てきました。年収1,000万円くらいを稼ぐ人が現れたら、「クレオフーガ、オーディオストックを使えば、音楽で食っていける」という1つのモデルになれると思っています。
―インターネットのおかげで、音楽業界での売れ方も多様になってきています。その中で、どんな役割を担っていこうと考えていますか?
確かに、YouTubeやニコニコ動画、Twitterなど、様々なプラットフォームのおかげで、今までとは違ったチャネルから有名になるクリエイターは増えています。セルフプロモーションがしやすくなったという意味では、チャンスは広がっていると言えます。一方で個人の活動力では、著作権など権利まわりの管理が難しい。例えば、とある企業がクリエイターの曲を買いたいと思っても、直接コンタクトを取ると連絡がすれ違ううちに話が頓挫してしまったり、契約内容に齟齬が生まれたりする。そこで我々が間に入ることによって、話が円滑に進み、クリエイターは音楽制作に専念できます。
―クレオフーガでは、様々なゲームタイトルやアプリとのコラボレーションも行っていますよね。
そうですね。中でもバンダイナムコさんの「太鼓の達人」とは3〜4回コラボレーションさせていただいています。クレオフーガ内でコンテストを行い、優秀作品となった曲は太鼓の達人に搭載されるというものです。選ばれたクリエイターさんはすごく喜んでくれますし、バンダイナムコさんからも「荒削りだが面白い曲が発掘できる」という声をいただいています。また洗足学園音楽大学さんと一緒に、作曲家の植松伸夫さん(「ファイナルファンタジーシリーズ」など)をお招きして講演会を開催するといった企画も実施しました。
初回のコンテストには数百名からの応募。「みんな同じ悩みを抱えている」と確信した
―そもそも、なぜこのサービスを作ろうと思ったのですか?
もともと学生時代から作曲をしていましたが、誰にも聞いてもらえず、悶々としていました。そこで10年くらい前、「作った曲をネット上で発表する場所を作りたい」と思い、音楽投稿サイトを立ち上げたんです。その際「サイト内でコンテストを行ったら盛り上がるんじゃないか」ということも思いついて。インターネットのおかげで誰もが音楽を発表できるようになったとはいえ、実質、チャンスは有名なクリエイターに集中しています。誰もが応募できる、登竜門のようなコンテストを作れば、もっといろんな人にチャンスが訪れるのではないか、と考えました。
―ものすごいバイタリティですね! なぜ、音楽投稿サイトを自分の手で作ろうと決心できたんでしょうか?
うーん、実は決心というほどのものではありませんでした。もともと「音楽家になりたい」という思いの傍ら、「エンジニアになりたい」という思いもあって、プログラミングの勉強をしていたんです。自分としては音楽家とエンジニア、両方に繋がることでしたから、サイトを作ることに関してはそれほど悩みませんでしたね。当時は「起業しよう!」という意識はなく、「こんなサービスを作りたい」とか「作曲のコンテストを作って、みんなでワイワイ盛り上がりたい」という思いで動いていました。
―初回のコンテストは手探りだったかと思いますが、どのように開催したんでしょうか?
1回目の時は、クリエイターの方々にひたすらメールを送りました。「こういうコンテストをやるので、出てくれませんか」というものですね。そうしたら、なんと数百人の方から応募があったんです。その時に、「みんな作品を発表する場を求めていたんだ」ということを実感しました。
社内にスタジオをオープン。インターン生がレコーディングに立ち会うことも
―とてもおしゃれなオフィスですが、こちらは今年2月に引っ越してきたばかりなんですよね。
はい、そして4月から社内にレコーディングスタジオをオープンしたんです。現状、レコーディングを経験できるクリエイターは減っています。CDが売れなくなった影響で、音楽の制作費がかなり削られているんです。曲の9割ぐらいは自宅で作って、歌だけスタジオで取る、という制作の仕方も増えています。でも、スタジオに入ると学ぶところがたくさんあるんですよね。一流のレコーディングエンジニアを呼んでいるので、そういう人の仕事ぶりを間近で見ていただきたいとも思っています。
―今後このスタジオはどのように活用されるのでしょうか?
使い方は2つを想定しています。1つは、オーディオストックの中でも特に活躍されている方々に対して、月に一定回数を無料で貸し出す予定です。もう1つは弊社が主催し、演奏家をお招きして行うレコーディング会。こちらはすでにスタートしていて、先日はサックスとバイオリンのレコーディングを行いました。僕らは運営として、タイムキーパーやサポートを担っています。例えば、スタジオのドアは防音のため重いので、演奏家の代わりに私たちが開け閉めをしているのです。演奏以外のところで疲れさせないために、演奏家に対しては、できる限り気を配っていますね。
―音楽が好きな学生にとってはとても魅力的な現場だと思うのですが、インターン生も、レコーディングに関われたりするのでしょうか?
はい、レコーディングの準備や運営も、インターン生にお任せしています。演奏家さんへの依頼やその後のメールでのやり取り、また作曲家からデータを受け取るなど、レコーディングを実施するに当たって必要になるお仕事を担当していただきます。レコーディング当日は先ほどお話ししたようなドアの開け閉めだったり、曲が終わったタイミングで次の作曲家・演奏家さんをスタジオに通したり、といったサポート業務ですね。
「好きだから頑張れる」 西尾さんにとっての「働く」とは
―西尾さんにとって、「働く」とはなんでしょうか?
僕の場合、仕事は趣味の延長のようなものです。弊社の社員は10名ほどですが、「そもそも楽器を演奏していた」とか、「音楽が好き」とか、仕事としてではなく、音楽そのものになんらかの思い入れがある人の方が仕事を楽しんでいるし、長く続いている印象です。もちろん「音楽は趣味のままが良い」という方もいらっしゃると思いますが、少なくとも自分が誇りに思える仕事を選ぶべきであることは間違いありません。
―まさに「好きを仕事に」ですね。
有名なベンチャー企業がたくさんある中で、特別給与が高いわけでもない弊社がなぜ社員に選ばれているのか。それは、自分が好きな領域で仕事をできるのが、単純に楽しいからなんですよね。ちょうど今は、事業を拡大し会社を成長させる段階。私たちはプラットフォームビジネスではあるものの、コンテンツが大事だと考えています。もしかしたらすでに模倣したサービスが出てきているかもしれませんが、「良いモノ作り」をちゃんと積み上げていけば、コストも時間もかかるので追いつかれないはずですよね。音楽に対して、熱い想いを持った方をお待ちしております。
クレオフーガ 担当者プロフィール
西尾 周一郎
代表取締役社長
1982年岡山県生まれ。4歳からエレクトーンを習い始め、学生時代は音楽制作にのめり込む。岡山大学在学中にビジネスプランコンテストで優勝するなどの経験を経て、2007年に音楽サービスを提供する株式会社クレオフーガを設立。「サウンドクリエイターの未来を創る」を理念として、ストックミュージックサービス「Audiostock」等の開発運営を行う。
2016年にピクスタ株式会社と資本業務提携を行い、2018年には株式会社スペースシャワーネットワークなどから2.6億円の増資を実施。
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