生産者・食材の予約指名買いサービス「OWNERS」で、日本の食に新しい風を!|株式会社ukka

日本の農業に新しい提案をするべく立ち上がった小林さんと谷川さん。それぞれに使命感を抱いていた2人は共同創業という形で株式会社ukkaを立ち上げ、農業を中心とした食のオーナー制度プラットフォーム「OWNERS(オーナーズ)」を運営しています。「作物を予約する(=オーナーになる)」という斬新な切り口の同サービスはリリース直後からメディアに注目され、すでに各界の著名人も利用。今回は2人に、サービス運営にかける思いや、互いの人柄などについて伺いました。

ECサイトにはない「人間らしさ」のある農産物流通を。

―まず、お2人が「OWNERS」を運営する理由をお教えください。

(小林)今、日本における農業従事者の半分くらいは70歳以上。しばらくするとこの方々がリタイアし、一気に農業人口が減る時が来ると予想できます。そうなると、日本の農業生産は「低コスト型(普段の食事を安価に供給する農業)」と「高付加価値型(値段は高くても美味しくて安心できる農産物を供給する農業)」の二極化が進んでいくでしょう。しかし、現状日本の多くの農家はどちらにも振り切れていません。高付加価値型の農業を営んでいる農家自体はいるんですが、その農家と、高付加価値の作物を欲しがる人が結びついていないんです。私たちはその点に目をつけました。種を植える段階からファンになってもらい、しっかり関係性を築いていくためのプラットフォームとして「OWNERS」を運営しています。作物を予約してくださったオーナーさんには、生産者さんの背景や思い、農法や特徴といった内容まで逐一伝えるような記事を作成しています。

(谷川)今後AIやIoTが発達するとお店や生産現場には人がいなくなってきます。そうすると「人から買う」ということの価値が圧倒的に高くなっている中で、農業はまだまだ取り残されています。農家と消費者が有機的に交わるためには、お互いに当事者意識を持つことが大切だと考えています。OWNERSはお客さんが共感した食材、生産者、産地を登録することで、自分が関わっている感覚を持って、楽しみに待つことができる。お急ぎ便、当日便が当たり前の世の中において、この「待つ」という行為そのものが生活を豊かにしてくれるのではないかと思うんです。自然があって、季節が巡って、そして人の手で作るから待ち時間が生まれる。そして、作った人に「ごちそうさま」と言える。そんな人間らしい体験が、OWNERSの醍醐味です。

(小林)現状、生産者さんの中には、「誰が食べてくれているのかわからない」というのが悩みとなっている方も多くいます。例えばお米で言えば、品種と等級によって単価が定まっていて、それを何kg納品したからいくらもらえる、というのが一般的なんですね。そして最終的には他のお米とも混ぜられてしまうので、我々は誰が作ったかわからない米を食べていて、生産者側も誰が食べているかわからない。でも“食”というのは本来、誰かとの関わりを感じながら食べることで、豊かになるものだと我々は思うんです。だからOWNERSは、作る人と食べる人の繋がりを大切にしています。

さらには、小規模農家さんは特に、作物ができてから売り先を考えるような流れで農業をされている方が多いのですが、これが一定のファンが定期的に買ってくれる状態になると、計画的に生産ができるようになります。また、 OWNERS では種を植えるような段階からオーナーを募り、募集を締め切った時点でお金を農家さんに支払ってしまいます。 農業の投資回収スパンは数ヶ月と非常に長いですが、一部でも OWNERS でファンが付けば、キャッシュフローが改善するので、この点に魅力を感じて OWNERS を利用頂いている農家さんもいます。

作物を巡る物語が、農家とオーナーを繋ぐ。

―オーナーにはどんな方が登録していますか?

(谷川)現状のオーナーは「忙しい都会生活の中でも“食べること”で幸せをもっと感じたい」と考える30〜40代の方が多いです。生産者との繋がりや、旬の季節を感じる、そういうことが幸せに繋がるということに共感してくださる方々ですね。あとは子育て中の方もいます。種や苗、花、実、そして収穫と、生産工程の写真が届くので、食育にもなるんですよ。私たちがやろうとしているのは、農家さん一人ひとり、作物一つひとつが持つ物語を可視化して魅力的なコンテンツにすること。コストをしっかりかけて丁寧に取材をして、農家さんからうかがった物語を記事としてオーナーに届けています。

―記事を拝見しましたが、とても惹き込まれる内容でした。実際に始めてみて、反響はいかがでしたか?

(谷川)完全にPRなしでここまで広まるとは思っていなかった、というのが素直な本音です。サービスをスタートして間もない頃から各界の著名人の方も共感してくださって、オーナーに登録したり、SNSを通して広めていただくなど自然な拡散が生まれました。当時自民党農林部会長だった小泉進次郎さんにも激励の言葉を直接いただきました。こうした影響力のある方々に「同じインターネットサービスでも、今までのものと何か違うぞ」と感じていただけたことが良かったと思います。

―これからはネットとリアルを分断してしまうのではなく、いかに両者をつなげていくかが大切ですよね。

(谷川)そう、これもOWNERSの特性なんですが、インターネットでの買い物でありながら、人から直接買っている感覚になるんです。例えばECサイトでマンゴーを買った時、わざわざ人に言わないと思うんですよね。でもOWNERSで「●●農園の●●さんからマンゴーを買いました」ということは発信したくなる。

先日嬉しいできことがありました。石垣島のとあるピーチパイン農家さんをリピートしてくださったオーナーから、「去年箱を開けた時の香りや感動を忘れられず、今年も参加させていただきます」という声が届いたんです。普段、ものを買う時に「参加する」とは言いませんよね。でもそのオーナーにとって、生産者さんから作物を買うことは、もう「参加」という行為になっていたんです。

―なんだか、聞いているだけで心が豊かになりますね! これからの展望についても教えてください。

(谷川)OWNERSを一方で、オーナーにとっての第二第三の故郷を作りだす場にもしたいと思っていて、昨年からすでに自治体とのタイアップにも取り組んでいます。行ったことがない所でも、そこで生まれた作物をずっと食べていると愛着が湧きますよね。地方移住のきっかけをOWNERSなら作れるんじゃないかと、興味を抱いてくださっている自治体さんは多いです。

(小林)そして私たちは“100年”という所を意識していまして、100年後には「都市にいても地方の生産者と当たり前に繋がっていて、季節ごとに旬の食材を、どこからどこへでも、届けられる状態にしたいと思っています。

農家さんが出会わせてくれた2人。ベクトルがピッタリ重なった。

―そもそもお2人は、なぜ農業に興味を持ったんでしょうか?

(小林)米農家だった祖父母を見ていて、子ども心にいろんな問題意識を抱いていました。誰が買っているかも、誰が食べているかもわからない。買ってくれた人から「ありがとう」と感謝されることもない。祖父母が農業をしていた頃は、指導通りに農薬や除草剤を使って米を育てていて、基本は農協さんにおろしていたんですね。でも実は、はじっこに農薬などを使わずに育てている田んぼが1枚だけあって、そこでできた米は自家消費するか知り合いにあげていました。 祖母になぜ作り分けるのか聞いたところ、「農薬を使わずに育てるのは大変なんやぞ」と言われて。 でも子供ながらに、「高いお金を払ってでもこっちの米をほしい人も居るんじゃないか」と思いました。ほしい人と作る人がつながってないだけなのではないかと。そんな原体験があったから、農業課題にはずっと興味を抱いていました。

(谷川)私の場合は大学卒業後に入ったPR会社で、クライアントに自治体や食品企業が多かったんです。とある自治体さんとのお仕事を通して、熊本県にある小さな村のお茶農家さんのことを知りました。お茶はとてもおいしく、毎年農林水産大臣賞を受賞されるほど評価されていたんですが、その方が作ったお茶を買う手段がなかったんです。ご存知かもしれませんが、お茶はいろんな産地のものがブレンドされていて、割合が多い産地の名前が商品に記載されます。そのお茶農家さんの作ったお茶も、大半が産地も名前も記載されず「静岡茶」として流通していました。そのことを消費者目線で見た時、自分が何かその人に関わってる感覚を持つことができたら、誰もが「その人が作ったものを買いたい」という気持ちになるんじゃないかなと感じたんです。それ以来、現在のビジネスモデルを構想し始めましたね。

―そんなお2人は、どのようにして出会ったのでしょうか?

(小林)OWNERSに登録している農家さんが繋いでくれたんですよ。OWNERSがスタートした時、私はいちオーナーとしてパッションフルーツを買ったんです。「ついにこういうサービスをやる奴が出てきたか」と思いながら(笑)。そうしたら、私の友人が偶然その農家さんと知り合いで。一度その友人たちとパッションフルーツ農家さんの所へ遊びに行ったことがあるんですね。その時、私が考えていたビジネス構想を農家さんに話してみた所、谷川を紹介してくれたんです。実際に会ってみて、お互いにやりたいビジネスの構想について伝え合った時、ほとんど同じことを考えていたことがわかりました。志もやりたいことも同じなら、「一緒に会社を起こそう」と素直に思えました。

―それぞれに強い思いを持っていたお2人が、運命的に出会って、そのベクトルがピタリと一致した感じですね。お互いに尊敬し合っている所を教えてください。

(小林)ケイ(=谷川さん)は、そうですね……。私が30歳ぐらいの頃は、ここまで寛容さとか相手への思いやりは持てていなかったと思います。事業提案もうまいし、伝えることが相手にすんなり伝わる。人に対する優しさみたいなものが、この年にしてすでに醸成されている所を尊敬しています。

(谷川)としさん(=小林さん)は、上場企業で技術トップをしていた技術や経験はもちろんですが、何より1人の人間として年齢に関わらず、常に好奇心と向上心を感じるところが尊敬できるところです。誰に対しても対等でリスペクト精神と興味関心を持って接する所が「さすがだな」と思います。さまざまな経験を積んでいくと、自分の領域だけに向かっていきがちになるじゃないですか。だからこそ、としさんの全てのことに興味関心を持って、人に会ったり調べたりする積極的な姿勢はいつも僕自身が見習う所です。

―失礼ですが、お2人の年齢を伺ってもよろしいでしょうか?

(小林)私が41歳、谷川が30歳です。私は昔から年齢で上下関係を決めるということに強い抵抗感を持っていまして。10歳差で離れてはいますが、仕事をする上では全く気にならないです。仕事には上下関係ではなく役割があるだけだと思っていますので。トップがこういう感じですので、同様にインターン生の方に対しても、信頼できる方であればどんどん大きな仕事をお任せしたいと思っています。

―年齢が離れていても同じ方向を向いて経営されているのは素敵ですね! これから加わるインターン生にとっても刺激的な環境になりそうです。

(谷川)「食」と「農業」への強い思いと自分の力を発揮しながら、ITと企画、両方の目線を学び、人脈も得られ、スキルを上げていける環境だと思います。このような環境って、なかなかないと思うんです。エンジニアに直接「どういうスキルが必要なのか」「フリーランスになるにはどんな準備が必要か」といった質問もざっくばらんにできる。一方で、ITだけでなく、リアルも巻き込んだ行政との事業も作っていくことができる。たくさんの人たちの暮らしを変えられるチャンスがあります。そんな経験が学生時代にできたら、きっと大きな財産になると思います。

(小林)学生であっても、すでにでき上がっている仕事の一部分を切り取ってお任せするのではなく、サービスをどう進化させていくかという所から関わっていただくつもりです。これは新卒に限りませんが、一般的な採用ではまず組織があって、不足するポジションに当てはまる人を見つけて、配置していくというものになると思いますが、逆に当社では「その人がやりたいことが、たまたまukkaにあった」という状態にしたいと考えています。なぜなら、自ら「これをやりたい」と思って取り組んでいる人は、そうでない人に比べて圧倒的に乗り越えていく力が強いからです。その上で会社としては、「食」や「農業」に関心の高い方に挑戦していただけると嬉しいですね。

ukka 担当者プロフィール

谷川 佳
代表取締役 / 共同創業者
1987年大阪府岸和田市生まれ。関西大学法学部卒業後、PR会社にて地域ブランディング・企画事業に従事。その後、オーナー制度プラットフォーム「OWNERS(オーナーズ)」を構想し、サービス設計・営業・システム開発を行い、2015年12月、株式会社エル・エス・ピーにてサービスをローンチ。運営統括責任者としてサービス運営および企業とのアライアンスを推進。
2017年9月、共同代表の小林と共に株式会社ukka を創業し、代表取締役に就任。

小林 俊仁
代表取締役 / 共同創業者
1977年生まれ、実家は元々三重県亀山市の米農家。 京都大学大学院情報学研究科在学中からコミュニティーエンジン株式会社でオンラインゲームの開発に関わる。2003年に同社取締役に就任後、北京に移住して子会社を設立し、CEOに就任。 2007年2月に日本に帰国。2010年5月から ONE-UP株式会社 テクニカルディレクターを務め、2011年6月にAimingに移籍。2013年5月から最高技術責任者に就任、2015年4月に東証マザーズに上場。
2017年9月、共同代表の谷川と株式会社ukkaを創業し、代表取締役に就任。

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インターンシップガイド編集部
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