前回の投稿で、”電子カルテ共有サービス”というアイデア誕生までのお話を紹介しました。
ところで、美容師が記録しているカルテって、どんなことが書かれているのか。
ー お客様一人一人のために書かれているカルテは、美容師さんの価値だ。
写真を残すことは前提として、それ以外にどういう情報を残せるようにしたら良いのかは、実際に美容師、美容室に聞かないとわかりません。
そこで、社内メンバーに声をかけ、普段通っている美容室を紹介してもらい、実際に訪問してカルテにはどんなことが書かれているか見させてもらいました。大小10店舗程度、訪問したと思います。
まず、全ての店舗が「紙」管理でした。
いわゆるお客様のお名前や住所等の顧客データはPOSレジシステムで電子管理しているのですが、
毎回の施術情報の記録は、紙でした。
理由は、
・書いた方が早い。
・お店にはパソコンが1台しかないので、自分の好きなタイミングでPOSレジシステムへの登録ができない
というものがほとんどでした。
これを聞いて、サービスとして考えていた「美容師個々の端末で扱える電子カルテシステム」は大いに受け入れられる可能性があるな、と考えました。
文字よりわかりやすい写真付きで、個人端末から登録/閲覧できるカルテシステム。
そしてカルテを拝見し、それ以上にワクワクしたのが、記録されている「カルテ情報そのもの」でした。
まさに目を見張るような情報を残している美容師さんが何人もいらっしゃったんですね。
髪に関する情報はもちろん、どんな会話をしたか、次来るまでにどんな商品を使ったら良いか、施術中にアドバイスしたケアの方法。それだけではありません。趣味や、「車検が近い」、「春に転勤がある予定」など、お客様一人一人の深いパーソナルデータがたくさん書いてありました。
お客様一人一人を一生涯担当しようという責任の強さのようなものを感じました。
聞けば、そのように情報をしっかりと記録している美容師さんは、概ね再来率が非常に高かったです。お客様一人一人のことを深く知ることで、お客様の信頼を勝ち取っているんですね。
こんなに一人一人のお客様を大切にしている美容師さんがたくさんいるんだって、正直驚きました。
この体験は、クーポンで自分を不要に安くして価値を下げるのではなく、日々の仕事の蓄積を可視化することで、美容師さんの価値がもっと正しく認識されるのではないか、という思いに至りました。
ー 価値の可視化は、最適な美容師さんとの出会いにもつながる
美容師さんの価値であるカルテには、どんな趣味嗜好を持ったお客様で、どんなヘアデザインをしたのかが書かれています。
お客様が再来すれば、その情報が来店のたびに蓄積されていきます。
つまり、美容師さんが日々記録するカルテ情報は、お客様の満足度の証でもあるわけです。
満足していなければ、1回限りのカルテになってしまう。
20も30もあれば、それだけ満足して通い続けていることがわかります。
これは、どのようなヘアデザイン、どのような年齢や性別、考え方を持っているお客様から支持を得ているのか、把握することができます。
さらにカルテを共有する仕組みに、お客様からの評価情報も得られるようにすれば、さらに詳細な満足度を把握できます。
それを活用できる形で可視化することは、美容師さんと既存のお客様だけではなく、
自分に合った美容師さんに出会えていないお客様が、自分にマッチした美容師さんと出会えるチャンスにもつながる。
つまり日々の仕事の蓄積であるカルテ情報は、新しいお客様と最適なマッチングを促すことにもつなげられる。
多くの人々が一生涯任せられる美容師さんと出会うことができれば、日々の生活が外面も内面もより楽しく豊かなものになるだろうし、美容師さんの価値も適正に評価される(安売りしなくても顧客がつく)ようになる。
美容室のカルテをそんな風に捉えたサービスは、その時代、どこにもありませんでした。
「情報資産活用」のプロとして、やらない選択肢がありません。
そして、本格的なプロダクト/サービス開発がスタートしました。
つづく。
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