新卒の内定辞退を減らすには?辞退の理由と防止対策を解説



「売り手市場」と言われて久しいここ数年の新卒採用市場。どの会社も採用したいと思わせる優秀な学生は、複数社の内定を獲得したあとに比較検討してから入社する会社を決めるようになってきています。企業側も優秀な学生を確保し、採用充足するために内定辞退を防止する対策が重要となってきました。

では、内定辞退を減らすポイントはどこに隠されているのでしょうか? 本来であれば、会社説明会から選考会、面接、内定通知、内定後までの一貫した流れを通して、会社理解が進み志望度が上がっていくように選考フローを設計することが重要ですが、今回は内定通知後の学生のフォローのポイントに着目して内定辞退を減らす方法を紹介します。



目次

学生のホンネを理解していますか?

内定辞退を減らせるかどうかは、「採用担当者がどれだけ学生のホンネをヒアリングできているか」にかかっています。学生が内定の承諾を迷っているときに担当者がホンネを理解できていれば、その学生が必要とする情報の提供ができたり、話が合いそうな社員に会ってもらったりといった有効な対応ができるからです。

学生が悩んでいるポイントと的外れの情報を提供してしまったり、ひたすら自社の魅力をアピールするようなことをしてしまえば、「この会社は自分を理解していないんじゃないか」という不安や不信感から、志望度は下がっていくでしょう。

しかしこの「ホンネ」、採用担当者にはなかなか話してくれない学生が多いのが現状です。人は誰でも、自分を良く見せたり、相手を傷付けないように、時にはホンネを隠して会話をするものです。

例えば、以下のような感情から、ホンネを話さない学生はよくいます。 「本当は親に反対されたので辞退したいが、今までお世話になった人事の方にそんな理由で断るのは申し訳ないので、納得してもらえる理由にしなきゃ。」

「実は面接で話した社員と自分のタイプが合わなそうだったので辞退したいが、内定承諾しようと思っている会社は同業他社なので、できるだけ穏便に辞退しておきたい。」

「職種は同じで他社のほうが条件が良かったから他社に入社したいが、内定をもらうまでに熱い思いを語っているので、今更そんなこと言うのもかっこ悪い。」

「学生が話していることは本当にそう思っていることなのか?」を常に気にかけながらコミュニケーションをするよう、心がけましょう。


新卒採用で学生が内定辞退してしまう原因

会社に対する想像と現実のギャップ

内定者は内定後に内定者研修や内定者インターンを通じて社内への理解が深まってきます。そこで当初の企業に対するイメージと現実に大きな落差があった場合、学生が内定辞退してしまう可能性があります

選考段階で自社についてしっかりと説明したつもりでも、社会人経験のない学生はまだ業務や組織について十分理解しきれておらず、会社やビジネスへの少しズレたイメージを持っているかもしれません。特に仕事へのキラキラした華やかなイメージを持っている学生は、こういったことが起こりやすいため注意しましょう。


社員の対応に問題があった

最終面接や内定後の面談などの機会で、従業員の対応に不信感を抱いた際にも学生が内定辞退をしてしまう可能性が高いです

入社する会社を人で選ぶ学生も多い中、「選考で出会った人は良い人だったのに、内定後に面談した人はいまいちだった...」という感想を持たれてしまうと、その企業への志望度は急激に低下してしまう恐れがあるので気をつけましょう。


社員や同期と気が合わなかった

内定者同士や社員との付き合いに問題がある場合にも辞退のリスクがあります。職場で良好な人間関係が形成できるよう社内の人間が配慮していたとしても、人間同士の相性についてはコントロールできないため、こうした原因で内定辞退が起こる可能性も一定数あるということを頭の隅に置いておきましょう

また、人事担当者が把握していないところで、内定者同士の集まりや社員との交流が行われることも起こりえます。そうした交流から起こるトラブルを防ぐためには内定者の関わり方について事前にルールを決めて周知しておく必要があるでしょう。


両親や周りの人の反対

内定者本人が入社を望んでいたのにも関わらず、両親や知人の反対から志望度が変わり内定辞退をしてしまうというケースもあります。特に大手企業への就職を強く望む両親はベンチャー企業やスタートアップ企業への就職に大きな反対を示すでしょう。

両親以外にも、部活やサークルの先輩、インターン先の先輩などの本人が尊敬している人からのアドバイスで心変わりをしてしまう学生は少なくありません。自社に対する世間のイメージや評判なども採用には大きく関わってくることを意識しておきましょう。


配属先の条件が合わなかった

新卒社員として学生を迎え入れる上で、時期や社内の状況などから、労働条件や職種、配属先などの内定者の希望が上手く通らなかった場合もあるでしょう。内定者は期待していた条件での仕事が出来ないと分かると、自社への志望度が下がってしまうかもしれません

そのようなタイミングで、他の企業からのスカウトを受けてそちらへ就職を決めてしまう可能性や内定者の周りの人間からのアドバイスで内定を辞退して再度就職活動をする可能性も考えられます。選考時点や内定後にどのような条件は最低限譲れないのかなど、詳しい本人の希望についてしっかりと把握するようにしましょう


辞退リスクのある学生と内定辞退防止のポイント

「内定承諾をした学生から、突然辞退の連絡が来た」というのを、多くの採用担当者が経験したことあるのではないでしょうか。このような学生の多くは、辞退の申し出に至るまで悩みに悩んで決断をし、心が決まった状態で連絡をしてきます。このタイミングでいくら手厚くフォローしても、内定辞退を覆すのは非常に難しいどころか、しつこく引き止めたせいでもっと遠ざかってしまうことすらあります。

こうした事態を防ぐためには、突然辞退の連絡が来る前に辞退の兆しを察知しておくことが重要です。では、辞退の兆しはどういったところに隠されているのでしょうか?以下に、辞退リスクのある学生の特徴と、そういった学生に対してするべきコミュニケーション方法を挙げていきたいと思います。


すぐに内定承諾した学生

内定を通知した際、すぐに承諾する学生とそうでない学生がいます。もちろん第一志望だったため即決して就職活動を終わらせる学生もいますが、内定承諾の重みは学生によって異なるということを理解しておきましょう。「今選考に進めている会社は全て結果が出てから比較して決める」といった意図で、とりあえず内定は承諾しておくという学生もいます。

すぐに内定承諾をした学生は、「併願していた企業の今後の進め方」も併せてヒアリングすることで、本当に入社する意思が固まっている状況なのかを確かめることができます。もしもまだ意思が固まっていない状況であれば、その理由に応じて継続したフォローが必要となります。


OBOGネットワークの強い部活・サークルに所属している学生

「一度は内定承諾したものの、その後部活の先輩に誘われて、ある会社のリクルーターと面談。トントン拍子に話しが進み内定に至った。随分と悩んだが、本当に自分に合っているのはその会社ではないかと思いはじめ、憧れの先輩もいるし、結局そちらの会社へ入社することを決めた。」

このようなケースは、特に体育会系の部活や数十年の歴史があり上下関係のしっかりしたサークルで起こりがちです。

選考や面談の中で、大学時代に所属していた部活やサークルについてヒアリングしている企業は多いでしょう。本人は内定承諾をして就職活動を終えたつもりでも、先輩や同期に影響されしばらく会わないうちに考えが変わるという可能性があります。採用担当者は部活やサークルでのエピソードに加え、「先輩や周りの同期が実際にどういった会社への就職を決めているのか」を聞いておき、定期的にケアする必要があります。


親の影響を受けやすい学生

「オヤカク」という就活用語を知っている方は多いでしょう。「オヤカク」は会社側が内定承諾した学生に対し親の承諾を得ているかを確認することで、主に親の反対を理由に内定辞退する人を減らす目的で行われます。内定に反対する親の特徴として、自分の子どもがやりたいことや将来の目標などといったポジティブな面ではなく、「待遇」「働き方」などにおいてネガティブな面がない会社に就職してほしいという思いをもつことがよくあります

内定承諾をした時点で、「両親や家族の反応はどうだったか」を聞いておき、もし学生の両親がネガティブ面がないかを気にしているようであれば、安心させられる情報の提供をするなどの対応をとりましょう。


併願している企業の中に、採用力の高い会社がある学生

学生は社員との接触回数が多くコミュニケーションの濃度が高いほど、志望度が高くなる傾向があります。過去に参加した他社のインターンシップを通して尊敬できる社員を見つけたり、自分の強みや弱みを的確にフィードバックしてくれた体験から、その会社への志望度が上がっていく可能性もあります。「併願している他社とは、どういう出会いだったのか、どういったコミュニケーションをとっているのか」を事前にヒアリングしておきましょう

また、そのような会社と比較されたときに、コミュニケーションの回数や濃度で引けを取らないためにも、可能な範囲でインターンシップやアルバイトに誘ったり、現場の社員と交流できる機会を設けるなどの対応をすることをお勧めします。


承諾せずに長期間返答を保留している学生

自社が第一志望の企業であればすぐに内定承諾をするはずですが、それを長期間保留にしているということは、志望度が高くないので他の企業を探しているか本命企業の選考結果がまだ出ていないということでしょう。学生の就職活動の状況をチェックしながら、採用において競合他社となる会社の採用活動も常に把握しておくことが重要です

ここで注意したいのは、学生と企業は対等な関係であるべきことを意識することです。今後長い間、一緒に仕事をすることになるかもしれない相手ですから、お互いが誠意をもったやり取りができる状態を意識的に作ることが重要です。企業から学生へこまめに連絡をするだけでなく、例えば「一週間に一度就職活動の状況について報告の連絡を入れてもらう」などの約束事を作り、対等な関係性を築いていくと良いでしょう。


最後に

ここに挙げた例はほんの一例にすぎません。今回の内容が、内定辞退を察知し学生から辞退される前の対策をするヒントになれば幸いです。

当然、学生が新卒入社する企業は一社ですので、悩みに悩み抜いた結果内定を辞退することはあり得ます。「この会社に出会えてよかった!」と思ってくれるような採用活動を行うことで、内定辞退をされたとしても、長い目で見れば学生が自社のファンになってくれたり後輩へのポジティブな口コミが広がったりと、企業ブランディングの形成にも繋がるかもしれません


この記事を書いた人
ちなつ
ちなつ 東京都
新卒でIT企業の人事部に配属後、新卒・中途採用および研修を担当。約4年間、採用戦略設計から母集団形成、選考、内定者フォロー、研修までを一貫して経験。採用イベントや選考で年間数百名の学生と接する中で得た知見、就職活動のリアルな情報を発信します。

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